誘われ、惑わされ
健人くんと車の中で。
禁忌への扉 の続編。
『ん、、っ......は、ッ』
「○○ちゃん着痩せするタイプなんだ」
『〜、!言わな、いで......』
「照れてるの?可愛いね、」
甘く溺れるような口付けを施した唇が離れ、紡いだ言葉に狭い車内で起こっている行為を実感する。ぺろんとニットを捲り上げ下着も外され露になった膨らみが健人くんの掌で形を変える。
後部座席で窓はスモークに覆われているとはいえ、いつ人が来るかも分からないパーキングエリア。......勝利だったら絶対選ばないだろうな。
「......ねえ、今勝利くん?のこと考えてたでしょ」
『ぁ、...!えっ、と、』
「ふうん、俺とシてるのに悪い子」
『、ひぅ、っ...あ、んン!』
す、と目を細めた健人くんが不敵に唇を歪め、まるでお仕置のようにきゅう、と強く摘まれた先端に思わず抑えていた声が零れる。そのまま指先と口腔内で飴玉のように転がされれば、あっという間に下着を汚してしまう。
見透かしたように健人くんの長い脚がぐりぐりとスキニーの上から敏感になったそこを刺激して。
『ん、ぁ、!それや、だぁ、......っ』
「でも全然嫌って顔できてないよ?」
"もっとシてって顔してる"、囁かれた言葉に頬が火照るのは恥ずかしいからなだけじゃなくて。その言葉が寧ろ正解だから。与えられる刺激は抗えないくらいに気持ちいい。
ぜんぶぜんぶ健人くんにドロドロに溶かされてしまいたくなる。
そんな想いが溢れ出し腰を浮かせれば、するりとスキニーが脚から抜かれブラとお揃いのミントブルーの下着が覗く。つー、とクロッチを這う指先にぴくぴくと内股が震えるのが恥ずかしい。
「これだけでも感じちゃうんだ」
『ん......、ぁ、けんとく、』
「こんなに○○ちゃん可愛いのにキスもしないなんて勝利くん勿体無いね?...俺だったら毎日満足させてあげれるなぁ、身体もココロも」
あまく誘惑する言葉にぐらぐらと惑わされる。......本当は、ほんとはずっと無関心で気付かないフリしても寂しかったのかもしれない。
中に忍び込んだ中指がぷっくりと膨らんだ蕾を捉える。動きと共にぴちゃぴちゃと淫らな音が車内に響いて。思わず耳を塞げば呆気なくシートに縫い付けられてしまう。
『あ、あ、...!だ、め、〜〜っ』
「ん~、なにが?(笑)」
態と音を立てるように指を深く往復させる健人くんは絶対分かってる。蕾を剥き出しにし、留まることを知らない蜜を何度も塗りたくられればもう限界で。
『あ、〜...っ、も、イっちゃ、......!』
「ん、いいよ?」
『だめ、声、っバレちゃ、うから、あ』
「じゃあ塞いであげる」
『んぅ、......っ、んんん、〜〜〜!』
柔らかい唇が覆うように重なり嬌声は健人くんの口腔内へと消える。そのまま核を優しく押し潰されれば頭の中で白がぱちぱちと弾けて。
......勝利じゃない、ほかの男の人の指でイっちゃったんだ、、
余韻の中で背徳感と罪悪感が燻る。下着を下げる健人くんの手を思わず掴んでしまったのは、きっと最後の最後で罪悪感の方が勝ったから。
『.........健人くんごめんなさい、やっぱりわたし、』
「そっか、まだ足りなかったよね」
『違っ、!あ、待って、...!』
「待たないよ、逃がしてあげないって言ったでしょ?」
薄暗い灯りの中でぎらり、と光ったその瞳は獲物を狙う獣のそれで。逃げられない、そう本能で直感した。シルバーが脚の間に落ちたと同時にざらりとした感覚がイったばかりのそこに触れる。ふう、と息を吹き掛けられればそれだけで腰がビクビクしてしまう。
待って、なんて言った癖にそれ以上もう抵抗できない。ふ、と小さく笑った健人くんがさっきの愛撫で溢れ出た愛液を一滴も零さないというように、何度もキツく蜜口を吸い上げた。
「ここ真っ赤にしてほーんとかわいいね」
『ひ、あ、〜〜!あ、あ、......』
「喋れないくらいきもちいんだ、」
勝利とは違う細長い指、柔らかな舌遣い、昂らせる言葉に翻弄され、また達してしまえば、きっともう顔なんて蕩けきってる。
見せつけるように赤い舌をべ、と出した健人くんは悪魔的にかっこよくて。快感で回らない頭は従順になってしまう。
「○○ちゃんのこと、俺に愛させて?」
『愛してくれる、の......?』
きゅ、とシャツを掴みながら放った言葉に形の良い瞳が丸くなる。のも束の間、ふわり、と何度目かも分からない口付けが落とされた。
「○○ちゃんが望むなら」
するり、と暗闇の中に浮かぶ白い頬に手を寄せれば、.........もう、戻れない。
「...っ○○ちゃん、力抜ける?」
『ん、あ、、むり、おっき......』
「、!」
『ああ、!な、んで、おっきくしちゃ、〜っ』
「ごめんね、○○ちゃんがかわいいから、」
どくん、と一度脈打ち、ぬぷぬぷと動き始める。浅い所を行き来するそれに声を押し殺せばパーキングの利用者だろうか、遠くで人の声が聞こえて。思わずぎゅっと締め付ければ健人くんの眉が切なげに歪んだ。
「誰か来ちゃうかもね、」
『やだ、ぁ、、っ...!』
「へえ、さっきより締め付けてる癖に」
意地悪な指摘にカッと熱が集まり反論しようと口を開いた瞬間。ずん、!と深く突かれ叫びにも似た甘い声が窓を揺らす。
どうしよう、聞こえたかも、誰か来ちゃうかも。そう思えば思うほど溢れてしまう蜜が潤滑液となる。スムーズになったのをいいことに更に健人くんが深く激しく、だけど的確にわたしの弱い所を攻めて。弾けた雫がぽとぽととシートに淫らな模様をつくった。
『、〜〜!んああ、っ、けんと、く...』
「っね、ほんとに聞こえちゃうよ?」
『んう、あ、あ、だって、......ッ』
「また口塞いで欲しい?」
願ってもない提案にコクコクと必死に頷けば、じゃあさ、と健人くんが端正な顔を近付ける。全てを虜にしてしまうような色の瞳。魅力的で儚くて妖艶で、見る人を惹き付けてしまう、そんな色。熱に浮かされながらそんなことを思えば、悪戯にその瞳が三日月を描いた。
「俺と勝利くん、どっちが気持ちい?」
そんなこと言えない、言える訳ない。意地悪すぎる質問に思わず口を噤む。
「ちゃんと言えたら塞いであげるね」
『ッ、どっちとかないもん、、』
「はぐらかしたままでもいいよ?......このままだけど、ね」
『ああ、〜〜〜ッ!ひぅ、あ、んン...!』
膝裏に手をかけられ更にぐ、と開かれれば、最奥と健人くんの尖端がぐちゅぐちゅと触れ合う。動きに合わせてぐらぐらと車体も揺れて。これで声まで聞こえたら確実にバレちゃう......!
『けんと、く、おねが、......!』
「ん、じゃあ言ってごらん?」
『っ、あ、健人くん、健人くんだから、あ、〜!』
譫言のように述べたその言葉は、紛れもなく真実で。こんなに脳の奥まで蕩けてしまうような行為も、もっともっと欲しいって思うこともはじめて。先ほどよりも近くで誰かの笑い声が聞こえた刹那、健人くんの片手が唇を覆った。
「よくできました、いい子、......ねえ好きだよ○○ちゃん、俺のものになって?」
掌が唇と唇を隔てたまま、ちゅ、とリップ音が鳴る。塞がれたままでは答えは言えず終いで。そのまま健人くんに溺れてしまえば、膜越しに白く濁った愛欲が吐き出され、愛に飢えた生き物のように膣内がビクビクと収縮した。
チカチカ、とハザードランプが照らすのは勝利とわたしが暮らすマンションで。結局あれから無言で送り届けてくれた健人くんになんて言えばいいのか分からない。
どうしようかな、と心の中で小さく息を洩らしたその時、ぐい、と身体が引き寄せられる。香ったのは、今日で嗅ぎ慣れた香水、それからさっきの行為でじんわりと汗ばんだ雄の匂い。
「待ってるから、」
『ッ、......』
「俺のとこにおいで」
幻のように掠めた唇はすぐに熱を失ってしまう。
それなのに部屋へと向かうエレベーターの中でそっと唇に指をあててしまうのは、彼の熱をまだ探しているからなんだろう。