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エンドライン

 

 

幼馴染のアイドル健人くんと失恋。
pretender モチーフ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幼馴染というのは厄介なものだ。
特別な関係でありながらそれ以上でも以下でもない。

 

子供の頃からずっと隣に居た○○は案の定美しく成長して、そばにいながらも俺には触れることも詰むことも出来ない花になった。
怖気付く俺を他所に○○の運命のヒトになったのは唯一無二のシンメでメンバーの菊池だった、なんてあまりにも自分が報われなさすぎて笑いさえ込み上げる。

 

ひとり芝居のラブストーリーをしたって、結局○○の目に映るのはいつも菊池だけ。言うならば差し詰め俺は観客A、ってところか。

 

 

 

 

 

『ねえ健人、聞いてる?』
「あ、ごめん、何だっけ」
『だから〜、風磨くんって赤リップとピンクどっちが好きだと思う?本人に聞いても"どっちでもいいんじゃん?"しか言わないんだから』

 


本当はちゃんと聞いてたしごめんだなんて思ってない。菊池と○○の2人だけの世界が垣間見えて心臓が掴まれたように苦しくて仕方無い。悩んでる○○の力になれたら、といつも相談役を受けるけど結局それは偽善で。辛い反面、"ありがとう"なんて罪も無く笑顔を見せる○○にこの関係も悪くはないかな、と思ってしまう。もう、と頬を膨らませる○○の頬をぶちゅ、と潰せばベビーピンクの薄い唇が強調され決して許されない想像が脳裏に浮かんだ。

 

もし○○が幼馴染でも菊池の彼女でもなくて。もし今、このまま見慣れたラグにゆっくりと押し倒して○○の白い頬に手を添え、誘うように艷めく唇に優しく自分のそれを重ねて、好きだと愛を伝えたら○○はどんな顔をするんだろう。どんな言葉を返すんだろう。

 


「、菊池は赤が好きなんじゃない?前○○が赤つけてた時写真見て可愛いって言ってたから」
『え、本当?うそ!もっと早く教えてよ!』

 


頬に手を当て分かりやすく照れる○○に、また繰り返してしまった無駄なたらればを願う事を止める。カチカチと1秒毎に進む秒針に長年のロマンスの終わりが見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

『ねえ健人、』
「ん?」
『久々に手繋ごうよ』
「え、」

 


近所である○○の実家への帰り道、突然の発言に吃驚して隣を見れば下唇を軽く噛んでいる。それは○○が照れ隠しをする時の昔からの癖で。衝動的に理性がほんの少しだけ外れ、右手をとれば昔とは違う所謂恋人繋ぎをして細い指と指を絡めた。

 


『...ふふ、懐かしいね、よくこうやってさ学校からの帰り道歩いてみんなにからかわれたよね』
「あん時お前さあ、"健人だけはないから!こんなもやし!"って泣いたの覚えてる?マジでショックだったからね?」
『もうごめんって!恥ずかしかったの!』

 


眉を下げた○○が繋いだ手をぶんぶんと振る。この恋が叶っていたならこうして手を繋ぐのも当たり前なんだろうな。悪戯に光る○○の視線がちらり、とこちらに移り"あー!"と一本道に向かって叫ぶ。

 


「うっさいな、なんだよ(笑)」
『今だから言えるけど、わたし健人のことずっと好きだったんだよね』

 


思わぬ告白にドクン、と大きく脈打ち繋いだ掌がじんわりと汗ばんだ。

 


『でも健人全然昔からわたしのこと意識してなかったでしょ?だから高校の時にすっぱり諦めた!そのおかげで風磨くんに出逢って恋できたんだから、本当に健人のおかげだよ、ありがとう』

 


"俺も好きだったよ、ううん、今でも好き...だから俺のとこ来てよ"、そんな風に無責任に伝えれたらいいのに。当たり障りもない言葉を返して家まで送り届ければ、帰り道、○○の温もりが立ち消え代わりに秋にしては冷たすぎる秋風が吹く。顎まで伝った何粒もの雫が風に乗ってアスファルトの道路に吸い込まれ、それはまるで○○への恋心のように誰にも見つかることなく静かに消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、重厚な扉を白い手袋を嵌めた女の人が開けば、そこには昔から好きだった長い黒髪が繊細に結われ唇をほんのり赤く染めた○○がいた。振り返った○○のその大きな瞳に映る俺は一体どんな顔をしてる?マーメイドのように白いレースを引き摺り此方に歩み寄る○○は、間違いなく今までで1番可愛くて綺麗で、幸せそうだった。

 


「○○、」
『健人、来てくれてありがとう』
「...菊池は?」
『それが部屋入ってくるなりぼろぼろ泣いてさ、タンマって言って帰ったの』

 


"柄じゃなさすぎ"、と笑う○○もきっと泣いたんだろう。よく見れば目の端が少し赤くなっている。綺麗に巻かれた横髪に優しく触れれば胸が甘い痛みで疼く。

 

こんなにもお似合いの2人で、こんなにも今日という素晴らしい日に君は幸せそうなんだから、君の運命のヒトはやっぱり俺じゃないんだね。

 


「...菊池なら心配ないけどさ、絶対幸せになれよ」

 


本当はそのウェディングドレスを纏ったベビーピンクな唇の君を連れて、真っ赤な絨毯の上を歩いて、幸せにしたかったのは俺だけど。

 


『うん、健人もね』
「○○、」
『ん?』

 


○○にとって自分がどんな存在だとかそんな事は分からないしこの先も知らないけど、それはきっと永遠も約束もない関係だけど、やっぱりこの関係も悪くは無い、と思う。ふわり、と微笑んだ○○に、好きだとか好きだったとか愛してるとか愛してたとかの代わりにこの言葉を捧げる。

 

 

「ほんとに綺麗だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 


end