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恋 #3

 

 

けんしょり連載#3。裏。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『勝利くん...どういうこと?』

 


聞きたいけど聞きたくない、知りたいけど知りたくない。矛盾だらけで震える掌にアートを施した爪を立てれば鈍い痛みが突き刺さる。

 


「、、中島さんは気に入った女の子見つけたらすぐ手出すって芸能関係の知り合いから聞いた、○○だけじゃないんだよ、スタッフとかメイクさんとか、」
『噂じゃん!そんなの、じゃあ勝利くんは実際に見たことあるの?』

 


それ以上聞くに耐えなくて勝利くんの言葉を遮って初めて声を荒げれば何故か勝利くんがわたしより余程辛そうに顔を歪める。芸能人のゴシップネタが根も葉もない噂だったなんて話よくある事だし、健人くんは人気だから足を引っ張ろうとする輩もいるかもしれない。そうだ、そんなのきっとその人たちが作ったデタラメに決まってる。

 


「見たことは無いけど、さ、○○は思い当たる節あるんじゃないの?だからそんな必死になるんじゃないの、?」

 


勝利くんの指摘に無視していた都合の悪いことを突き付けられる。出逢った初日にキスされたこと、手慣れたように誘われたこと、経験の少ないわたしでも分かるくらい、えっちが上手かったこと。噂がもし、もし仮に本当なら全部全部辻褄が合ってしまうんだ。

 

『知ら、ない、...』
「○○もうやめなよ」
『嫌、むりだもん、やめるなんて無理、じゃあ勝利くんは理屈や正しさで好きを諦められるの?好きな人に自分じゃない誰かがいたら引き下がれるの?』
「それは、」

 

感情的にぶつけた言葉は上手くいかない現実の八つ当たりに等しい。口ごもった勝利くんに、"ほら、わたしと一緒じゃん"、と爪先で輝くビジューを眺めながらぽつりと零せば冷めきった空気に勝利くんが緊張した息を洩らした。

 

「...そうだよ、諦めれないから言ってる、好きだから傷付いて欲しくないのは勿論あるけど、それと同じくらい俺にしたらいいのにって思ってる」
『、?勝利、くん?』
「ずっと○○のことが好き、そろそろ俺のこと見てよ」
『わたし、ごめ、』

 

無神経すぎた物言いに血の気が引く。動揺した瞳からぼろぼろと涙が滑り落ちれば初めて勝利くんの腕の中へと導かれた。健人くんとは違う匂い、健人くんとは違う腕の回し方。無意識に健人くんを探してしまうわたしは恋の病に取り憑かれて死んでしまうのかもしれない。

 


「返事は今はいらないから、これ以上○○のこと困らせたくないし」
『ありが、とう』
「...あと、さ、」

 

 

歯切れ悪く告げられた第2の噂はわたしの頭の中をぐるぐると回る。真面目が取り柄なのにろくにキーボードも打てなければスマホの通知に飛び付き落胆する。ずっとただの同僚だと思っていた勝利くんに告白されて動揺したのも束の間、もう違う男の人のことで頭も胸もいっぱいなわたしは本当に本当に本当に、最低だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから2週間、健人くんからの連絡はぱたりと途絶えた。メッセージを開けば最後に送ったメッセージに既読が付いていてそれで会話は終わり。ブロックされてたら、既読無視されたら、そう思うと怖くて何度も送ろうとしたメッセージを何度も削除した。視界の端に捉えたクライアント先と電話をする勝利くんの姿に、あの日の言葉を思い出す。

 

 

「中島さんに2回、...抱かれた女の子はいないって、みんなその場限りで終わりだから、...もう仕事以外で中島さんと関わり持つことはないと思うよ、」

 

 

あれだけかっこよければ取っかえ引っ変えで選び放題な訳で。事実、音沙汰無い現状に噂は噂じゃないと嘲笑われる。なんて不便な自由なんだろう、恋に溺れさせてもくれないなんて。

 

 

最近のツケが回ってきて山のような残業を終えればもう時計は21時を指す。見兼ねた勝利くんはきっとわたしが仕事が進まない理由を分かっているはずなのに手伝ってくれて、その優しさに胸の痛みと不甲斐なさを感じた。

 

『勝利くん、本当にありがとう、1人だったら終電間に合ったかどうか...』
「いいよ、俺もこの間手伝ってもらったし、...あのさ、明日休みだしこの後久々に2人で飲みにでも、」

 


気恥しいような気まずいような雰囲気を2人きりのオフィスが包めば、まるで邪魔するかのようにいつのまにかマナーモードが外れていた着信音が鳴る。表示にはずっと待ち焦がれていた人の名前が煌々と光っていた。勝利くんの前だというのに反射的に緑の丸をスライドすれば、"あ、○○ちゃん?"、と通話口から健人くんの声がする。

 


『うん、どうしたの?』
「いきなりごめんね、今から会えない?」
『え、今から、?』

 


洩れてしまった言葉に勝利くんの顔を伺おうとして、やめる。もし傷付いた表情をしていたらどうしたらいい?行かないって言えるの?...ううん、きっとわたしは勝利くんが泣いていても馬鹿みたいに同じ答えしか言えない。

 


「急すぎたかな?もし難しかったら、」
『ううん、今仕事終わったから大丈夫だよ』
「そっか、よかった、じゃあ場所送るね、...楽しみにしてる」
『わたしも、だよ』

 


ツー、ツー、と無機質な音が異様に五月蝿く響くのは何でだろう。俯いたまま、"本当にありがとう、...ごめんね"、と何に対してか分からない謝罪を述べてその場を立ち去ろうとすれば後ろ手を強く掴まれた。

 

「行くの?」
『...行くよ、』
「行かせない、って言ったら?」
『振りほどいてでも行くと思う、...』
「きっとまた傷付くよ、」

 


その言葉にそれでもいいと思った。この恋を失うくらいなら恋の病に取り憑かれて酸素をなくして死んでしまう方が余程いい。大切なものを失ってでも彼が欲しい。健人くんのためなら何時だって泣いていたい。何度も何度もこの心に綺麗な鋭いナイフを突き刺して殺し続けて欲しい、もう、どうしようもないから。

 


『健人くんになら傷付けられたいの』

 


だらん、と力が抜けた腕を抜け、結局勝利くんの顔は最後まで見ることが出来ないまま指定されたホテルへとタクシーを飛ばした。わたしのあの言葉はどれだけ大切な同僚を傷付けたのだろう。今のわたしに勝利くんに好きでいてもらう資格なんてない。だって、腕を掴まれてるあの時だって今日の下着どんなの着けてるっけ?、なんて考えていたんだから。

 

 

 

 

 

 

 

真っ黒な扉が開けば言葉を発する間もなく壁に腕を縫い付けられ2週間を埋めるような口付けが降ってくる。ちゅ、ちゅ、と軽く重なり下唇を吸えば一度目が合って舌が深く絡まり合う。上の歯列をあの赤い舌でなぞられていると思えばぞくぞくと身体の奥底から欲求が沸き起こった。これからを予感させるように脚に割り込んだ膝もただの興奮材料になってしまう。

 


『ン、けんとく、』
「ごめん、抱かせて?久々の○○ちゃん可愛すぎて我慢できない」
『健人くんの好きにしていいよ、?』
「そんな風に煽ってどうなるか分かってる?」

 


強引な言葉とは裏腹に手つきは変わらず優しい。露わになった赤色の下着に偶然とはいえやる気満々みたいで恥ずかしくなる。"こんな下着も着けるんだ?唆られるわ"、膨らみから鎖骨へと這った舌は耳に到達する。くちゅり、と水音が鼓膜に響けばそれだけでも声を抑え切れないのに下着の隙間から弱い所を捉えられた。

 

『ん、ふ、そこ、やだ』
「やなの?でもココはこんなにびんびんになってるけど、おかしいなあ」
『ぁ、んン、!』

 

下着をずらされ先端にちゅう、と吸い付かれる。含んだ咥内でちろちろと舌先で弄ばれもう片方はぴん、と弾かれれば腰がぴくぴくと震える。

 

「こっち見て」
『ぁ、むり、ッひ、!ン、〜!』
「次逸らしたら噛むから」

 

顎を掴まれ先端を舐める健人くんが必然的に視界に映る。獲物を狙う蛇のような視線から逃げればぎゅう、と先端の根元を抓られた。絶妙な力加減のそれに目の前がチカチカし出す。赤く腫れ膨らんだのを慰めるように優しく何度も犬のように舐められれば明らかに物足りなくて。それに気付いた健人くんが意地悪に口角を吊り上げた。

 


「して欲しいことがあるなら教えて?○○ちゃんの望むこと、なーんでもシてあげる」
『ぁ...さっきの、』
「さっきのってどれ?もっとちゃんと言ってくれなきゃ分かんないなあ」
『んン、ぁ、』

 

言葉を誘い出すようにくるくると先端の周りを指先が円を描く。緩やかな刺激に耐えられなくなって、"ぎゅうって、抓って、?"とお強請りすれば望んだ通りになり、その時、目の前がさっきよりも大きくチカチカと火花を散らした。

 


『ン、〜〜ッ!は、ぁ』
「抓られてイっちゃうなんて、○○ちゃんほんといい子」

 


いい子って、身体の相性がいい子?感度がいい子?どっちにしろ好きだとか気持ちだとかが伴っていない"いい子"なのは明らかだけど別に何だっていい。今はただ健人くんが与えてくれるフィクションに陶酔していたい。

 

胸だけでなく指でぐしょぐしょに濡れそぼった蕾も愛撫される。人差し指を自身の咥内に含み唾液をつければ陰核にぬるぬると塗りたくられ、好きな人の唾液と蜜が混ざり合うその隠微さにまた絶頂へと達してしまった。

 


「ん、挿れるね、」
『、あ、!んン、〜!ッ』
「は、きっつ、可愛いよ○○ちゃん」
『ぁ、ぁ、健人くん、...!』

 


薄膜を纏ってぐちゃぐちゃに奥を突かれれば好きが喉から飛び出しそうになってごくん、と飲み込む。2回目があるから特別だなんて、そんなの分からない。浮かれてしまったこの気持ちを言葉にすれば健人くんは幻のようにゆらゆらとわたしの前から消えてしまうかもしれない。言葉の代わりに嬌声が溢れ汗ばんだ首に腕を回すとより密着して健人くんが奥へと入り込む。太腿がくっ付いてしまう程近付けば小さな水しぶきが音を上げた。

 


『ン、あ!ぁ、けんと、く、〜〜!』
「ッ、く、」
『あ、も、イきそ、んン、〜〜ッあ!』
「ん、一緒にイこっか、」

 


初夜に健人くんから教えられたように自発的に膝裏を抱えれば打ち付けられる腰が速くなる。びくん、!と身体が浮き上がるのと同時に膜越しに濁った空っぽの愛情が熱く放たれた。意外と汗っかきらしい健人くんの額からぽとり、と落ちた汗さえも愛おしくて勿体なくて。中指の先で掬って舐めれば恋人同士がセックスの後にするようなキスを何度も何度も繰り返した。

 

 

 

 

 


「ふふ、眠そう」
『今日仕事忙しくて、...でも勿体ないから寝たくないな』
「だーめ、体調優先でしょ?明後日は仕事で会えるんだし今はゆっくり休んで」
『わたしが眠るまでは傍にいてくれる?』

 


とん、とん、と夢へ誘うように背中を優しくリズミカルに叩かれれば一気に眠気が増す。微睡みの中を利用して少し我儘に問い掛ければ顔に掛かった一束を耳にそっと掛けられた。

 


「朝起きてもそばにいるよ、おやすみ○○ちゃん」

 


唇に暖かな感触を感じたのを最後に闇の中へ堕ちる。そういえば初めて会った日以来キスマーク付けられてないな、と浮かんだ思いはぐしゃぐしゃに塗り潰して見なかったことにした。