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被虐的なプロローグ

 

 

地味な健人くんと図書室で。激裏。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは可愛い、らしい。

 


くっきりとした二重、透き通るような白い肌、ぷっくりとした唇。自分が可愛いに分類される人間だと認識したのはいつだったっけ。同性からの羨望と妬みの眼差し、異性から向けられる好意的な態度、街を歩く人々の視線、その全てがわたしに教えてくれた。

 


だからわたしは最大限までそれを利用して、"楽でたのしい"人生を歩むって決めたの。だって勿体ないからね。

 

 

 

 

 

 

 

 


〈ねえ、次は誰狙ってるの?〉
『もう、そんな言い方やめてよ(笑)』
〈だって○○いいなって言った人すぐ落とすじゃん!それにすぐ別れるしさあ〉
〈そうだよ、なんで別れるの?あ、とりあえず1回試したいだけ的な?〉
『ん〜、ひみつ』

 

 

人差し指を唇に充てればキャーキャーと盛り上がるのはそういうお年頃だから。だから言えない、本当は未経験だなんて。別れるのはキスより先に進むのが怖いから、だなんて。

 


彼女たちの中ではわたしは恋愛経験豊富な女の子。きっとクラスやこの学校の人たちだってそう思ってる。与えられたキャラを演じなければいけないのは、女の子特有で暗黙のルールでしょ?

 

 

『でも最近は中島くんいいなあって思ってるんだ』
〈えっ中島?!めちゃくちゃ陰キャじゃん!〉
〈それな、○○なら秒で落とせる(笑)〉

 

 

ああ、彼女たちは何も分かってない。表面上の雰囲気に騙されてるだけ。確かに中島くんはいつも無口で本を読んでて、一言で言ってしまえばもさい。だけどわたしは知ってるの、その眼鏡と長い前髪で隠れた顔は美しく端正で、かなりかっこいいってことを。

 


まさに磨けば光るタイプ。わたしと付き合い始めてかっこよくなる、なんて最高のシナリオだ。

 

 

『ごめんね、いきなり呼び出したりしちゃって』
「いや、大丈夫、それより話ってなに?」

 

 

誰もいない図書室に呼び出した中島くんはいつも通り片手に本を持っていて。窓から緩やかに差し込む夕日が空間に舞う埃をキラキラと照らす。

 

 

『えっと、あのね、......健人くんって彼女とか、いる?』

 

 

いきなりの名前呼びにもぴくりとも反応せず、その表情は淡々としていて。いないけど、と小さく呟くのに僅かな苛立ちを感じる。もっとわたしでペースを乱してみせてよ。

 

 

『よかったあ、、あっ、その、...実はずっと健人くんのこといいなって思ってて』

 

 

ぎゅ、と手を握り上目遣いで見詰める。初めて触れた手は男の子なのにすべすべで、わたしと同じくらい白い。ほら、大体みんなここで"俺も実は○○ちゃんのこと、"って言うよ?

 

 

「俺は君のこと、」

 

 

うんうん、わたしのこと?

 

 

「正直嫌いなタイプかな」

 

 

.........は?大きく目を見開いたわたしとは対照的に、ニヒルな唇が吊りあがった。握った手がわなわなと怒りで震える。

 

 

「こうやって媚びたら男が誰でも靡くと思ってるところとか特にね、あ、でも一周まわって可愛いかも、単純で」
『なにいって、』
「何ってそのままの意味だけど?」
『ッ、〜〜!中島くんってキスはおろか恋愛もしたことないでしょ?なのに上から語っちゃって馬鹿みたい』
「......じゃあ試してみる?本当にキスしたことないか、」

 

 

売り言葉に買い言葉。オレンジの光で色を変えたワイシャツの襟を掴みぐ、と引き寄せる。

 

 

『やれるならやってみせてよ』
「......あ、そ、○○が言ったんだからね」
『!なに勝手に呼び捨て、...んん、!』

 

 

開いた口ににゅるりと舌が差し込まれる。口腔内を把握するように動くそれが、上顎、歯の裏、舌のザラザラした部分をなぞって。思わず身を捩れば後頭部をがっちりホールドされる。......まるで、脳内をぐちゃぐちゃに掻き乱すようなキス。

 

 

『っふ、あ、......っ、...んン、』
「は、清楚な見た目してキスだけでそんな声出すんだ?○○の方が慣れてなかったりして」
『そんなわけ、んう、ッ......!』

 

 

反論は許さないというように唇が覆われ、隙間がなくなる。貪るように下唇をちゅう、と吸われれば身体の力が抜けてしまって。ガタン、と大袈裟な音を立てながら長机に押し倒される。

 

 

『や、ら、』
「だから○○が言ったんじゃん、.........ほら舌出して」
『!?や、むり......!』
「出さないなら指突っ込むけど」
『ッ、.........べ、...ぁ、ふ、......っ』

 

 

人差し指が唇の隙間に触れ、その鋭い瞳に本気だと分かって。いやいや舌先をちろっと出せばあの柔らかい舌で引き摺りだされ、舌だけが絡まり合うなんとも淫靡なキス。

 


もう十分わかった、キスしたことない訳ない。寧ろ今までしたどんなキスよりも思考を奪い蕩けさせるようなキス。何も分かってないのは、わたしも同じだったんだ。

 

 

『も、わかったら、馬鹿にしてごめん、』
「いいの?ここでやめて、物欲しそうな顔してるけど」
『ッ、してない!』
「じゃあ確認してもいいよね?もし濡れてなかったらもう触らないから」
『〜〜!や、だめ、やだやだ、!』

 

 

じたばたと暴れても男の子の力に適うはずなく。折り曲げて短くしたスカートがぴらんと捲られる。露わになった白のショーツのレース部分を、いつも本をめくっている指先がヒラヒラと弄んで。

 


クロッチ横から忍び込んだ指先がくちゅ、と音を奏でた。

 

 

「あーあ、なにこの音」
『んンん、......っ...!あ、やあ、!』
「......濡れちゃってるね?」
『ひ、あ、っほんと、だめ、なかじまく、...』
「嫌がってる割にここどんどん溢れてくるけど、なんでだろーね」

 

 

何で、なんてわたしが聞きたい。だって初めて男の子に触れられた時痛くて仕方無かったのに。こんなに気持ち良くなんて無かったから今まで怖かったのに。

 


分かってる癖に態々聞いてくる彼は楽しそうにくすくすと笑う。音を嫌がって瞳に涙を溜めるわたしを見ると、それはもう可笑しそうで。中島くんは間違いなくサディストと呼ばれる人間だ。

 

 

「○○のエッチな液で汚れるから脱ごうね」
『、あっ、......!〜〜〜っ、みない、で、』
「だめ、起きて脚開いて」
『!?そんなの、む、.........、』

 

 

無理、そう言いたかったのに言えないのはわたしより上の視線にいる中島くんがすっと目を細めたからで。それだけで頭の中枢が痺れたように麻痺し、被虐的な気分になるわたしは、マゾヒストと呼ばれる側の人間だったのか。

 


長机に腰掛け、下着もつけずはしたなく脚を開いてるなんて、誰が数十分前に想像しただろう。

 

 

「ふふ、泣きそうなの?」
『ッ、ふ、......!も、おねがい、』
「やめるのをお願い?それとも、触って欲しいっていうお願い?」
『!んン、...っ、あああ、ッ、〜〜〜!』
「○○が本当に嫌ならやめてあげる、無理強いはしない主義だから」

 

 

剥き出しになった蕾をくるくると擦られ、誘うようにその尖端に蜜を塗りたくられる。ぴくぴくと震える腰もだらしなく開いた隙間から零れ落ちる嬌声も、素直で。

 


ふう、と息を吹きかけられればポタッと蜜が一雫机に模様を描く。

 

 

『......もっと、さわっ、て?』
「何処をかちゃんと言わないと分かんない」
『、やだやだ、言えない、!』
「じゃあ終わろっか」
『っ、待って』

 

 

去ろうとするシャツの裾を慌てて掴む。ほら言って、と優しく頬を撫でられれば羞恥で涙がポロポロとその手を伝って。

 

 

『.........、クリ、触って、くださ、』
『なかじまくん、お願い、......ッ、...ひう、!』

 

 

堪らないというように中島くんの唇が勢い良く触れる。また押し倒されれば陰核をぐちゃぐちゃと、だけど的確に感じるポイントを虐められて。上も下もドロドロに溶かされる。

 


ずっと腰の跳ねが止まらなくて、ゾクゾクと身体の底から何かが沸き立つ。こわい、いやだ、こわい、でもきもちい。舌をぢゅっと吸われた刹那、びくびく、!と身体が震えて脳裏が真っ白に染まる。.........これが、イくって感覚?

 

 

「○○ってシたことないでしょ」
『、ん、...』
「処女でこれかあ、.........いいね、かわいい」
『えっ、かわいいって、』
「なに?」
『いや、中島くんって可愛いとか言うんだって思って...』
「そりゃ男ですから、○○の泣き顔も喘ぎ声も可愛いよ?」
『〜〜!あっそ、』
「......やっぱり喋ってるより喘いでる方が可愛いから、大人しく鳴いてて」

 

 

ぐちゅ、と蜜口に差し込まれた指が狭い中をゆっくり動く。グチグチと音を鳴らしながらお腹の裏の方を擦られれば、さっきとは違う感覚。ムズムズするようなそれは絶頂には程遠くて。

 

 

「開発しがいがあるなあ、」
『ん、ぁ、......っ...、なんのこと、』
「これじゃイけないだろうから、こっちも舐めてあげるね」
『〜〜〜、?!!ひあ、んンん、ッ、あ、あ、......っ』

 

 

指の動きはそのままに舌が全体を舐め上げる。初めての行為に暴れようとしても、完全に力は抜け切っていて。せめてもの抵抗で頭を押す手はふるふると快感が震える。

 

 

『んん、あ、あ、や、またきちゃ、』
「ん、ちゅ、......いっていーよ?」
『...ひう、ッ、あああ、ーーーー!』

 

 

舌足らずな声が聞こえた瞬間、ぢゅうと蕾を吸われまた呆気なく果ててしまう。

 


余韻に浸るわたしを現実に引き戻したのはカチャカチャと鳴る金属音。指定のベルトを緩め、露わになった下着は張り詰めていて。むり、そんなの絶対痛いもん、入らない......!ごくん、と生唾を飲みながら後ろへ逃げる。

 

 

『や、おねがい、やだ無理入んない、』
「さっきから嫌がっても結局気持ち良くなっちゃうんだから、もう嫌がるフリやめたらいいのに」
『フリじゃない、!』
「じゃあまたあの子たちに処女じゃないって嘘つく?」
『そ、れは......』

 

 

ぐらり、と傾いたのは足首を握って引き戻されたから。ぐらり、と揺れたのはずっと中島くんはあの子達の中心で嘘をつくわたしを黙って笑って見てたんだって分かったから。

 


そんな彼に処女を奪われるんだ、そう思うだけでどろりとまた机を汚してしまうわたしはきっともうおかしい。奪うのか、捧げるのか、どちらが適切かは分からないけれど。

 

 

「俺のも気持ち良くして」
『ん、ぁ、〜〜〜!っ......い、あ、...』
「痛い?」
『いた、い、』
「......はあ、かわいい、今日は優しくしてあげるから」
『っあ、なかじまく、』

 

 

かわいい、なんてとっくに言われ慣れた。それに彼の言うかわいいは性的に興奮する、という意味合いで。それなのに嬉しくなってぎゅっと背中のシャツを掻き集めてしまう。

 

 

「っく、締まりやば、」
『ん、ん、、、ぁ......』
「悦くなってきたね、?」

 

 

愛液を潤滑液にして、浅い部分や奥の方を健人くんが行き来する。

 

 

『ッあ、そこ、なんか、やだ、...!』
「ん、ココ?」
『、ひ、〜〜!そこ、っ、』
「ここが好きなんだ?じゃあいっぱい虐めてあげるね」
『ふあ、あ、ちが、ーーー!』
「優しくシてあげるって言ったじゃん、!」

 

 

これが優しいなら今後どうなっちゃうんだろう。ん?今後って......、いやもう中島くんとシたい訳ないじゃん、こんなサディストお断り、な筈なのに身体の反応は止まらない。

 


心だけ置いてけぼりなのが怖くてまた泣いてしまえば、結局中島くんの思う壷。

 

 

「っは、○○、...あ、名前呼んだらナカぎゅうぎゅう締め付けてきた、○○、」
『あ、やら、.........っ...』
「あんま泣かないで、興奮しちゃうから」
『、ッへんたい、...んンん、〜〜!』
「変態に犯されて善がってんのはだれなの、?」

 

 

がっ、と大きく脚を開かされより奥に入り込む。ガタガタと揺れる机も、廊下の笑い声も、グラウンドで鳴り響く笛の音も全てが遮断されてゆく。

 

 

『あ、あ、またきちゃ、〜〜〜!』
「ッ、あ、イく、......」

 

 

中島くんが財布に常備していたらしい膜がわたしたちを隔てる。

 


......この人は一体、どんな人なんだろう。もっと知りたい、この感情は彼にとって迷惑なんだろうか。

 

 

『中島くん、』
「なに?もし好きになったとかならやめてね」
『自惚れすぎ、こっちの台詞よ』
「......クラスで見る○○とマジで全然違うんですけど」
『どっちが好き?』
「...こっちかな」
『わたしも、今の中島くんの方が好き』

 

 

気だるそうな瞳がちらり、と此方を向く。片手にはまた本。

 

 

『ねえ、それなんて本?』
「......興味あるの?」
『中島くんのこともっと知りたくなったの』
「○○って変わってるね」

 

 

彼の白い歯が見え、くしゃりと丸っこい瞳が垂れる。

 


わたしは初めて、彼の笑顔を見た。