海月は水面にて揺れる
メンヘラ製造機な健人くんに依存する。裏。
※無理矢理表現あり、クズな健人くん
『ぁ、あ、んン、ッ』
「ん、かわいいよ、」
トントン、とリズミカルに奥を突く動きに合わせ理性に鍵をかけてゆるゆると腰を動かす。
揺れる視界の中見下ろせば濃紺というような、ブルーブラックというようなシーツの上に透けるような金髪が散らばっている。
まるでそれは、夜の海に月の影が浮かんでいるかのようで。
その感覚に〝海月〟という生き物を思い出す。
ふわふわと漆黒の海を漂うクラゲ。独特な美しさと静謐感を持つクラゲに魅了されれば時間を忘れてしまう。
健人くんは、海月のような存在だ。
甘ったるい雰囲気を引き摺る情事の後すぐに気付いた。
洗面台にぽつんと置かれたヘアゴム。数種類の化粧水。クローゼットの中にある新品の下着のストック。誰かに見つけて欲しがっているようにベッドの隙間にいるピアス。
こんなの誰でも分かるだろう、健人くんにはわたしの他にもっとずっと女の子がいるということが。
『健人、くん、わたしのこと好き、?』
「ん?もちろん好きだよ」
『...1番に?』
「うん、1番○○ちゃんのことが好き」
後ろから優しく抱き締められれば首筋に唇が寄せられる。もう一度目を見て"好きだよ"と言われればそれだけで十分な気がした。
それに、健人くんは誠実だ。わたしといる時は携帯にメッセージが来ても返信もしないし見ることだってない。
『なあに?ずっとこっち見て、何かついてる?』
「んーん、可愛いなあって」
『またそんなこと言って、』
「だってほんとに可愛いんだもん、ねえ何で○○ちゃんってそんなに可愛いの?」
こんな風に一緒にいる時はわたしだけを見てわたしだけに愛をくれるんだ。
化粧水や下着だって隠さなければいけない、という意識はきっとない。健人くんは自分のしてる事を酷いだとか疚しいだとかそんな風には考えていないのだろう。だったら余程浮気している彼氏や不倫している世間の旦那さんより誠実じゃないか。
わたしは健人くんのことが好きで、健人くんもわたしのことが〝ちゃんと〟好き。
だからわたし達の関係は、大丈夫。
そう思って健人くんの傍にいた。
健人くんから与えられる愛はきっと嘘ではない。その証拠に本当に私のことが好きだ、という目をする。でもその度に他の子にもそんな顔をしているんじゃないか、もしかしたらもっと特別な顔をしているんじゃないか、なんて気が狂いそうになる。不安になれば食事も喉を通らず眠ることもできない。
健人くんに会いたい。ずっと一緒にいて欲しい。他の女の子に会って欲しくない。わたし以外の身体に触れないで。好きだと言わないで。
健人くんからの愛はとても脆くて壊れやすかった。
そして今、わたしは所謂修羅場の真っ最中だ。
パリン!と耳を劈くコップの割れる音に泣きじゃくる声。健人くんと今から愛し合うという時にインターホンが連打され開けたドアからなだれ込んできた清楚な雰囲気の人はわたしを見るなり狂ったように泣き出した。愛おしい人に縋り付く誰かもまた健人くんのことが愛おしい人なんだろう。
「健人!ッひどいよ!わたしのこと、好きって、言ったのに、」
頭をガツン、と鈍器で殴られたような衝撃が走った。この人も健人くんの好きな人なんだ。
「この人、だれ、?この人のこと好きなの?!」
「うん、好き、でも××のことも好きだよ?」
「なにそれ、意味わかんないよ、!」
そう泣き叫んだその人はこちらをキッと睨むと、健人くんのシャツを掴み引き寄せ私の目の前で唇を重ねた。
もう一度パリン、と音がした。
今度はコップじゃなくてわたしの心が割れた音だった。
『...健人くん、わたし帰るね』
「っ、待って、○○ちゃん!」
幼い頃誰かに言われた言葉が蘇る。
〝クラゲはね、綺麗だけど触っちゃだめよ〟
〝毒があるから、見るのが丁度いいの〟
ベッドに沈んですぐに携帯を開く。健人くんからの連絡は勿論無くて。今頃あの美しい手でさっきの女の人を慰めながら官能的に愛しているのかもしれない。
3秒躊躇って、健人くんの連絡先をブロックした。こちらから連絡しなかったらもうきっと二度と会うこともない。これでいいんだ、次は幸せな恋をしよう。
これ以上の幸せなんて、ない気がするけれど。
泣き疲れいつの間に眠っていたのか、さっきも聞いたインターホンが連打される音に飛び起きた。
え?あの人じゃないよね?、と恐る恐る覗き穴を覗けばそこにいたのは健人くんで。
『、え?』
思わず声を出してしまえば薄い扉を通して廊下に聞こえてしまう。健人くんの顔がパッと上がれば慌てた顔をしてドンドンと扉が叩かれた。
「○○ちゃんお願い!開けて!そこにいるんでしょ?お願いだから、」
『健人くん... ごめんね、開けれない』
「ッなんで!俺のこと嫌いになった...?」
『そんなことない、けど、わたしもっと幸せな恋をするって決めたから』
扉の向こうの健人くんは今どんな顔をしてる?少しでも悲しんでくれてる?それとも他の代わりの女の子に連絡してる?これで、終わり。
"ごめんね"、と最後に付け足して唇をぎゅ、と噛み締めた。なのに、
「...開けてくれないならこのドア壊すから」
『は、?』
「3、2、1」
いつもの健人くんからは考えられない暴力的な発言と突然のカウントダウンに思考が停止する。0、の声と同時に慌てて扉を開けばガッ、と少しの隙間に手が差し込まれ力づくで開かれた。
「他の恋なんて許さないよ」
わたしの部屋ということもお構い無しにずんずんと突き進む健人くんに手を引かれれば乱暴にベッドに投げられる。押し倒され上に跨る健人くんの瞳には光がなく夜の海のように深く真っ暗だ。初めて見る衝動的な健人くんに身体の芯が震える。
『けんと、くん、やめて』
「他の男なんて見ないでよ、○○ちゃんは俺だけ見てて」
『ん、っ!』
ずっとわたしが言いたかった台詞なのに、健人くんは勝手だ。強引に唇が重ねられ入り込もうとしてくる舌に流されちゃダメだ、ときゅっと唇を一文字に結んで頑なに拒む。それに眉を顰めれば唐突にトップスの中に手が滑り込み膨らみを捉える。驚いて力が緩めばにゅるり、と入った舌に咥内を犯された。
『ん、ふ、やめ、ぁ、んン!』
「大人しくして」
やだやだ、と首を横に振れば抵抗は許さないというように頬を持たれまた唇を押し付けられる。膨らみの締め付けを上へズラされれば、生理的に反応してしまった先端をこりこりと辱められた。
いつも健人くんはふわふわしてて紳士的で。エッチだって強引な時はあっても必ずやっぱり優しさは何処かに感じるのに、今の健人くんは真反対。衝動的で本能的、いつも秘めている自分の気持ちを全部ぶつけるかのような激しい口付けと膨らみへの愛撫にすっかり健人くんに慣れた身体はぴくぴくと跳ねてしまう。
「ん、可愛い、そのまま俺を感じて?」
『ぁ、や、だ!けんとくん、!』
「...抵抗しないで、酷い事したくないから」
健人くんから発せられたとは思えない言葉に涙が浮かぶ。どうして健人くんはこんなに必死になってるんだろう?わたしなんて大勢いるうちの1人でしょ?そう考えてる間にも健人くんの暴走は止まらず、先端を口に含めばちゅぱ、という音を鳴らしながら吸い付いたり舐めたり時には甘噛みされ矯声を懸命に押し殺す。
「声聞かせてよ」
『ッ、ふ、ン...!』
「ココ触ったらもっと素直になってくれる?」
『あ、!だめ、やだやだ、!』
ココ、と言われ指を這わせたのは先程から下着の中が気持ち悪いソコで。きっと触ってしまえばこの無理矢理な行為にドロドロに感じきってしまっているのがバレちゃう。力いっぱい健人くんの胸をぐっ、と押したのに呆気なく腕を捕えられる。健人くんの瞳は暗くて冷たくて濁っていてもう何を考えているかなんて分かる筈も無かった。
「酷い事したくなかったのに」
『ぁ、ごめ、なさ、』
「分かんない子にはお仕置きだね、」
健人くんのベルトがカチャカチャと外されればそのまま腕を頭上で一括りにされる。下着をずり降ろされ蕾に中指が触れただけなのに意志とは反対にどろり、と中から更に愛液が溢れた。こんなに抵抗してるのに濡れそぼっているのが恥ずかしくて涙が溢れる。
「○○ちゃん泣かないで」
『ン、あぁ、!ひゃ、ン、ッ』
ぺろり、と頬に伝う雫を舐めた健人くんの指はぐちゃぐちゃなソコを容赦無く責め立てる。ぎゅ、と根元を摘まれたまま先をぬるぬると擦られれば頭の中が真っ白になった。
そのまま脚を大きく開かれ健人くんの顔がそこに沈む。硬くした蕾に柔らかな舌が触れればそれだけで内股が震えた。舌先で尖った部分をちろちろと舐められたかと思えば、じゅる、と蜜を全て吸い付くすかのように激しく唇全体で愛撫されゾワゾワと鳥肌がたつ。
『あ、ァ、けんと、く、まって、〜!』
「まひゃなひ(待たない)」
『ぁ、んン〜〜、ッ!』
カリ、と歯が蕾にあたればびくん、!と大きく腰が跳ねて絶頂へと飛ばされた。いつもならこの後、中を解してから挿れてくれるのに余裕の無さそうな顔をした健人くんはピリッと破いた袋から避妊具を取り出し大きく主張したソレに膜を纏う。ぐ、と健人くんの怒張がトロトロになった蜜壺に挿入り始まりからグチャグチャと激しく突き上げる。
『ぁ、ぁ、けんと、く、』
「、○○ちゃん、すき、」
好きな人から好きと言って貰えるのにこんなに悲しいなんて、何て皮肉なんだろう。
ねえ健人くん、わたしも好きだよ。好きすぎて可笑しくなっちゃうくらい好きなんだよ。
好きを諦めさせてよ。苦しいよ。
そんな言葉にならない想いが涙となって枕に消える。ぐしゃり、と健人くんの顔が泣きそうに歪んだかと思えば中に挿入ったままぐるん、と俯せにさせられた。中がぐりゅん、!と掻き回されその刺激に呆気なく達してしまう。最奥を本能のままにコツコツと突かれれば生温い感覚が背中に落ちた。
「○○ちゃんが他の男のこと好きになるって考えたら、胸が苦しくてどうしようもなくなって、こんな気持ち初めてで、!ずっと、俺から離れないで、お願い、」
振り返れば真っ赤な瞳をした健人くんに背中に感じたものは涙だと気付く。
ああ、そっか。健人くんは恋を知らないんだ。
健人くんの感じてるそれは紛れもなく、恋だ。
健人くんは私に恋をしているんだ。
『ぁ、ン、けんとく、すき、〜〜!』
「、!く、ッ」
『も、らめ、イっ、んン〜〜!』
「○○ちゃん、ぁ、... !」
健人くんに腕の拘束を解かれれば手首は真っ赤になっている。それにまた健人くんは顔を歪ませれば、"ごめん、"と呟き小さく震えていた。自由になって真っ先に恋を知らない彼を包むように抱き締める。
『健人くん、わたしのこと考えたら胸の奥がきゅう、って苦しくなる?』
「うん、」
『いつもただ一緒に居るだけで幸せで、ずっと一緒に居たいって思う?』
「うん、ずっと傍に居て欲しい」
"それはね、恋だよ"
その言葉に長い睫毛をぱちぱちと揺らす健人くんの金髪をサラサラと撫でる。
『恋はね、綺麗で汚くて、楽しくて苦しくて、幸せなのに辛いこともあって、それでもやめられない毒みたいなものなの』
「...○○ちゃんは俺に、恋してるの?」
『うん、おかしいくらい』
「、俺もおかしいくらい○○ちゃんが好き」
ちゅ、と唇を寄せれば初めて本当に健人くんに触れた気がした。
健人くん、これからもっとわたしに恋してね。
ぐちゃぐちゃに綺麗な世界へ、ようこそ。