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鳥籠の鳥はいつ囀りを忘れるのだろうか

 

 

5000over企画。激裏。
K.N / ダーク

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大切なメンバーであろうと男の人を褒めないこと。


SNSをしないこと。


家族と健人くん以外の連絡先は携帯から消すこと。


会社を辞めて健人くんのお金で養われて、この部屋の中で健人くんの為だけに生きること。

 

 

健人くんは全部、愛だと言う。「○○を愛してて大切だから危険な目にあって欲しくない、○○も俺のことを愛してるなら分かってくれるよね?」、と。

 

 

.........わたしは愛していても分からない、けれど愛してるから分からないなんて言えない。一度首を縦に振ったその日から、愛は鎖と化しわたしを締め付けて離さない。健人くんの愛は満たされるどころかどんどんヒートアップし、一方でわたしの愛は水を与えられすぎて腐った花の如く朽ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「○○、今日はこの服にしよっか?」

 

 

どこにも出掛けさせない癖に健人くんはわたしに馬鹿みたいに高い服や化粧品、小物を買い与える。可愛いから何着ても似合うね、だなんて部屋の中にいるだけなのに馬鹿馬鹿しい。

 

 

「この服覚えてる?」
『もちろん、健人くんがプレゼントしてくれた服なんだから』

 

 

本当は何も思い当たらないけれど、そんな事はどうでもいい。如何に健人くんを満足させられる、彼女としての可愛らしい言葉を言えるかどうかなんだから。完璧に作り上げた表情で上っ面の台詞を言えば、健人くんの手が愛おしそうに頬を撫でた。

 

 

『健人くん、今日は早く帰って来てくれる?』
「早く帰りたいんだけど今日は24時回っちゃうかな」

 

 

ごめんね、と眉を下げる健人くんに1mmの罪悪感も湧かないのはもう完全に冷めきってるからで。練習したように表情は寂しそうに、目線は下に落とす。

 

 

「そんな可愛い顔されたら仕事行けないじゃん、もう、ほんと○○は可愛いね」
『ん、......待ってるからお仕事頑張ってね』

 

 

ちゅ、と下唇を吸うようにキスを落とされ甲斐甲斐しく背中に腕を回す。同じようにするり、と回った腕が苦しいくらいにわたしの身体を締め付けた。髪を指で梳きながら普段話す時より少し低い、圧をかける声色でお決まりの台詞が放たれる。

 

 

「今日も"いい子"で待てるよね?」

 

 

いい子、それはこの部屋から1歩も出ず健人くんに決められた通りに過ごすこと。

 


.........そんなのもう、真っ平御免。

 


少し身体を離し上目遣いでもちろん、とにっこりあげた口角で言えば満足したように健人くんの顔に笑みが宿った。

 

 

「じゃあいってくるね」
『うん、いってらっしゃい』

 

 

扉が閉まりきる寸前まで隙間から手を振る健人くんに、いつもの事ながら背筋にぞくり、と悪寒が走る。前はあんなに愛おしかった仕草もこんな風に感じてしまうんだから、きっと人間の愛はこの世で1番尊く恐ろしいものだ。

 


ガチャ、と二重に掛けられた鍵の音にハッとし、まるで監視してるみたいな健人くんの表情を頭の中から追い出す。

 

 

急がなきゃ、......今日わたしは鳥籠の中から飛び立つんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある程度の服や下着、必要最低限のものを鞄に詰め込む。置き書きは書くか迷ったけれど、どうしても情が溢れ一言、ありがとうとだけ綴った。まだ普通の恋人だった頃に貰ったペアリングとGPS機能を恐れて携帯をその上に置けば、まだ19時。
健人くんが帰ってくるまであと5時間もある。

 

 

玄関に立って靴が無いことに気付く。...逃げないように捨てられたんだっけ。ベランダのつっかけを持ってきて履けば、高そうな服とはチグハグの靴でもわたしにとってはガラスの靴同然。この靴と共に新しい日々が始まる。

 

 

「健人くん、...さよなら」

 

 

 

 

 


数ヶ月振りの空気を肺いっぱいに吸い込む。金木犀、雨上がりの独特な空気、車の排気ガス、その中に微かに混ざる冬の匂い。全部部屋の中では感じられなかった。

 


まだ部屋を出て5分もしないのに全てが新鮮でソワソワしてしまう。とりあえずどこに行こうか、きょろきょろしていれば"すみません"、と低い声にびくん、!と肩が揺れ心臓が跳ねた。

 

 

『ッ......あ、』

 

 

おそるおそる振り返ったそこには思った人物ではなく、スーツ姿のおそらくサラリーマンだろうか。清潔感のある爽やかな男性がやや頬を赤らめており、一先ずほっと胸をなで下ろす。

 

 

〈あ、すみません吃驚させてしまって〉
『いえいえ、こちらこそ、...あの?』
〈えっと、初対面でこんなこと失礼だとは思うんですけど良かったら連絡先とか、〉
『あ、......すみません、今携帯持ってなくて、』

 

 

本当の事だけど、令和の時代に携帯を持っていないなんて嘘に聞こえても仕方ない。お友達からでもいいんで、と食い下がる彼の手が手首を掴む。その強さから必死さが伝わり、暫く健人くん以外の男性に免疫の無かった身体はひやりと冷えた。

 

 

『あ、の、ほんとすみません!』

 

 

手首に絡んだ手を思い切り振り払い、足から離れてしまいそうなつっかけで必死に走る。どうしよう、ただのナンパがこんなに怖いなんて。もうとっくに鳥籠の中の鳥になってたんだ。

 


震える身体を摩りながら下を向いて歩いていた、その時。風と共に運ばれた甘い香りに足が地面に張り付いたように動かなくなる。逃げなきゃ、なんで、なんで動かないの。

 


ぐ、と痛い程腕を掴まれれば、タイムオーバー。

 

 

「外は危険だって言ったよね?」

 

 

真っ暗な路地をぽつん、と佇む街灯がぼんやりと照らす。キャスケットと黒マスクで覆われたその表情は分からない、けれどその瞳はどんよりと暗く濁っていて。チカチカ、と点滅した街灯はまるでわたしに警告しているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『な、んで、!24時って、』
「ああ、だって嘘だもん」

 

 

騙された、最初からわたしが逃げるかどうか試してたんだ。あっけらかんと放ったその顔を睨み付ければ、"○○も同罪でしょ、いい子にしてるって言ったのに"と、薄く笑いを浮かべる。

 

 

「携帯と指輪を置いて行った所は良かったけどね、○○の予報通りGPS付きだから、でも監視カメラは盲点だったのかな?」
『ずっとわたしのこと監視してたの?』
「ずっとじゃないよ?本当はずっと見てたいけど収録の時は流石にね」
『......ぅ、』

 

 

それ以外の時はずっと監視されていたという事実に胃の底から逆流しそうになる。健人くんがいない時間さえ、わたしは自由じゃなかった。最初から逃げれる訳、なかった。

 


ずるずると腕を引かれ辿り着いたのは10分ちょっと前に逃げ出した筈の2人の城。扉が閉まってしまえばもう最後。鳥籠の中の鳥は羽をもぎ取られ、命が尽きる最後の瞬間さえも自由になんて、なれない。

 

 

 

 

 

 


「雑談はこの辺にして、まずはその汚い身体洗おっか」
『待って、健人く...!冷たっ、!』

 

 

服を着たままバスルームに閉じ込められれば容赦無く頭から冷水をかけられる。上手く呼吸ができなくてただでさえ苦しいのに、シャワーとは反対に熱い唇が息を奪う。ぬる、と滑り込んだ舌は隅々までを消毒するかのように丁寧に這い、極め付けに唾液が押し込まれた。

 


行く宛も無くてこくん、と飲み込めば健人くんの表情に征服感が表れる。

 

 

「○○はずっとここに居て俺と生きてくれればいいんだよ?そしたらこんな怖い思いもしないんだから」

 

 

するり、と手首を撫でた刹那、肌を抉るような衝撃が走る。びり、と痺れたそこには健人くんの歯が食い込んでおり、たらり、と血が流れる。その赤は床に落ち、冷水と混ざって水玉模様を描いた。

 


今まで監禁状態でも健人くんは変わらず優しくて。初めての暴力行為にカタカタと奥歯が音を立てる。あんなに自由になりたかった癖に、いざ健人くんの怒りを目の当たりにすると後悔してしまう。それが思う壷だとも分からずに。

 

 

『ごめんな、さい、』
「あれだけ忠告したのに分かんないなら身体に教えるしかないよね?」
『や!や、だ、お願い、許して、!』
「だーめ、大丈夫、ちゃんと○○が"いい子"にできるように躾直してあげるから」

 

 

水分を纏って重くなった服が音を立てて落ちる。ぐちゃぐちゃに丸まったそれに、やっと思い出す。そうだ、これはあの日、健人くんに囚われた最初の日に与えられた服。
わたしは二度、捕まったんだ。

 

 

背中の鍵を外し、下着も全て剥ぎ取られればカチャカチャと金属が擦れる音がする。ぢゅう、と耳の下に刻印を咲かせた健人くんが、まるで悪魔のように耳奥に直接囁いた。

 

 

「いっそ子供でも作ろっか、そしたら逃げ出せないもんね」
『、健人く、ん』
「○○が悪いんだよ?こんなに愛してるのに......○○のことこんなに愛せるのは俺しかいないし、○○には俺だけで十分でしょ?なのになんでそれが分かんないかなあ、」

 

 

ぶつぶつと狂ったように呟く健人くんは完全に壊れてる。いつ歯車が狂ったのだろうか、もう何もかも分からない。

 


身体を反転させられ、愛撫も避妊具もなく渇いたそこに鋭い痛みが突き刺さる。メリメリと侵入する怒張にぼんやりと視界が滲み、鏡の中の健人くんが二重になる。それが優しかった健人くんと、狂ってしまった健人くんの残像に見えるわたしも同じように壊れてしまったのかもしれない。

 

 

『、〜あ!ッ痛、抜い、て!』
「でも○○のここ、咥えて離してくれないよ、ほら」
『んああ、!あッ、んン、』

 

 

散々抱き潰されて知られた弱い場所をぐりぐりと攻められれば、痛い程ぎゅうぎゅうと締め付けたそこがじんわりと潤い始めた。緩く開始した律動に震え始めた膝を庇うように、立て掛けられたシャワーに縋り付く。

 

 

「あれだけ嫌がってたのに結局気持ち良くなっちゃうんだ、ほーんと淫乱」
『んん、あ、ゃ、!』
「もしかして自由になって他の男とセックスしたかった?」
『、ひ、!ン、違、違う、からぁ!』

 

 

ぶんぶんと左右に振って全力で否定すれば、そうだよね、と健人くんの手が傷を作った手首に伸びる。態と傷口を押し潰す様に力が込められ、同時に最奥を突かれれば痛みと快感で頭がぐちゃぐちゃになる。

 

 

「そんなことしたら、......俺○○のこと殺しちゃうかも」
『ああ、ッ、絶対、し、ない、〜〜!』
「そうだよね、俺だけだもんね、はあ、すき、○○、すきすき、愛してる」

 

 

異常な"愛"の言葉を背中で受け止めながらやわやわと膨らみを揉まれる。きゅう、と先端を軽く抓られ、びくびくと腰が揺れる。苦しい筈なのに気持ち好い。怖いはずなのに、もっとして欲しい。アンビバレントな快感に子宮口の柔らかい部分と健人くんの尖端が愛液で絡みつき、蕩け、ひとつになる。

 

 

「、ッ中に出すから、」
『〜〜、あ!やだやだ、ン、それだけは、らめ、ッ』
「......はっ、冗談、だって子供なんて、2人の邪魔なだけだもんね、?」

 

 

喉の奥で笑った健人くんの手が首に回る。締め付けるその力は冗談なんかじゃない。薄くなった酸素の中で快感だけがクリアになる。ずちゅん、!と激しく突かれた刹那、膣の中はうねり頭の中は真っ白になった。余韻の暇もなくずるり、と勢いよく抜かれたそれを無理矢理口に充てられれば、健人くんの濁った愛情がどろどろと零れ落ちる。

 

 

「ほら、のんで」
『んぅ、、は、っ』
「○○、お願いだから嫌わないで、ずっと俺の傍に居て?じゃないと俺、おかしくなる」

 

 

どろりとしたそれを無理矢理飲み干せば、健人くんの愛が身体の隅々まで行き渡る。もう愛情はとっくの前にすっかり朽ち果てたはずなのに、どうして嫌だと言えないんだろう。どうして最後の最後で突き放せないんだろう。浮かんだ涙は生理的なものか、それともこの混沌とした感情のせいか。

 


朝のように、小さく震える健人くんの背中に腕を回す。

 

 

『健人くん、もうとっくに健人くんはおかしいよ、でもね、わたしもおかしいの』

 

 

結局、健人くんを愛してるか愛してないかなんて分からない。ただ1つ分かるのは、もう二度と健人くんはわたしを手放さないし、わたしも健人くんから離れないということ。この依存心を仮に愛と名付けるならば、わたしは健人くんのことを愛してやまないんだろう。

 

 

 

 

 


あれから、あの日のガラスの靴はボロボロに引き裂かれ、置き書きと指輪と共にゴミ袋の中へと捨てられた。その日のうちに健人くんは、もう一度やり直そう、と新しい指輪をプレゼントしてくれてわたしはそれを笑顔で受け取った。今度は嘘偽りのない、心からの笑顔だ。

 

 


ああ、それともう1つ、指輪が左の薬指に飾られたその日から首にも輪っかが嵌められている。家の中を移動する分には不自由はないし、ゆらゆらと揺れる紐さえも愛おしい。

 

 

だって、これも何もかも全部全部、健人くんの愛だから。